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下顎枝矢状分割術(SSRO)

下顎枝とは下顎骨の ”エラ” の部分から後方の骨を言います。この部分の骨を両側とも2枚おろしのように割ります。そして歯が付いている部分の骨(下顎骨体部)を動かします。歯が付いた部分の骨は種々の方向に動かせますので、適応範囲は広いです。

下顎枝矢状分割術の Step by Step

ステップ1:切開、剥離から下顎枝内面の骨切り

手術操作が容易に行えるように十分な開口状態が必要です。通常は指が3本入る程度(40-45mm)の開口状態にします。口の中の後方の頬粘膜を切開し下顎枝の骨面を露出します。そして下顎枝内面を剥離し下顎小舌(下顎内面の突起)を明示します。この突起物の直上で骨切りを行うのが安全です。ここの皮質骨と呼ばれる硬い部分の表層の骨を切ります。

ステップ2:下顎外面の骨切り

下顎枝の外側の骨膜を剥離し下顎角(エラの部分)を明示します。この下顎角と呼ばれる部分で下顎骨の外側の硬い部分の骨(皮質骨)を切ります。下顎骨の下端までしっかり切らないと後の分割がうまくいきません。表層の硬い骨(皮質骨)の骨切りが深く入りすぎますと太い神経があるので注意が必要です。

ステップ3:下顎枝内面骨切り部と下顎枝外側骨切り部の連結

下顎枝矢状分割術は下顎骨の下顎枝部を2枚おろしにする手術です。下顎枝部の前縁で内外側の骨切り部を連結する縦の骨切りをします。骨切りは皮質骨のみで深く入らないように注意が必要です。この部分の骨切りは視野が明瞭で容易に行えます。

ステップ4:下顎枝の分割

下顎枝の内面、外面、前縁を骨切りしています。下顎枝の骨が2枚に分かれるにはまだ下顎枝の後縁部が残っています。この部分に骨切りはできませんので割ることになります。分割術というのはここから名前が付けられています。骨切りした部分にノミを入れ、少しづつ広げて割ります。骨内には太い神経があるので注意が必要です。分割する方法は種々ありますが、私は特殊なノミを用い容易に分割しています。

ステップ5:分割した骨片の固定

分割後に歯列がある骨片を上顎の歯列に咬ませます。予定の位置で咬んだら上下の歯が動かないように固定します。そして分割した骨片を左右とも固定します。通常はチタンプレートという金属板を使います。吸収性プレートが使われることもあります。

適応症


  • 顎が後退→下顎体部の前方移動(アドバンスメント);約10mm前後
  • 受け口→下顎体部の後方移動(セットバック):約10mm前後
  • 顔面非対称又は下顎骨非対称→下顎体部の側方又は回転
  • 開咬(前歯が空いている)→下顎体部の回転(上顎骨の手術を伴うことが多い)

非適応症


  • 極端な下顎骨の時計回り回転している場合
  • 下顎枝の厚みが非常に少ない場合
  • 極端に下顎枝が小さい場合
  • 極端な下顎非対称

下顎枝矢状分割術の利点


  • 分割された骨面の接触面性が大きいため、治癒が良好です。
  • この手術では、歯列のある下顎体部を前進、後退、回転(水平及び上下的)と移動は種々な方向に可能です。
  • 分離された骨片を強固に固定できます。このため顎間固定が必要なく、また術後の気道管理が容易です。
  • 下顎角が元の位置に保持されます。
  • 下顎角部の筋肉が元の位置に保持されます。
  • 強固な固定のため骨片の安定性が良好です。

下顎枝矢状分割術の欠点


  • 神経損傷(下歯槽神経)の可能性があります。
  • 予想しない下顎骨骨折が生じる(不適切分割や不適切骨折)ことがあります。
  • 下顎骨の非対称が大きい場合は、改善が困難です。

合併症


術中合併症

  • 不適切分割
  • 出血
  • 分割された下顎枝(下顎頭を含む部分)の位置決めの異常

術後合併症

  • 顎関節症の発生(雑音や疼痛)
  • 後戻り
  • 出血
  • 神経障害(下歯槽神経、舌神経)
  • 創部の感染
  • 創部の離開