医院名 | 武藤歯科口腔外科クリニック |
---|---|
院 長 | 武藤 壽孝 |
住 所 | 〒359-1111 埼玉県所沢市緑町4-9-10-1 |
診療科目 | 歯科口腔外科 |
電話番号 | 04-2935-3846 |
■2017/7/16
ホームページを公開しました。皆様にご活用いただけましたら幸いです。
顎矯正手術は上顎骨および下顎骨に行われます。
ガミースマイルや強い受け口・顎曲がりなどに上顎骨のLe Fort 1骨切り術、上顎の出っ歯などに上顎骨分節骨切り術、受け口や顎曲がりの人に下顎枝矢状分割術、下顎の出っ歯に下顎骨分節骨切り術、オトガイの異常(出過ぎ、なさ過ぎ、曲がり等)にオトガイ形成術がそれぞれ行われます。
いずれも入院下の全身麻酔で手術は行われます。どの手術も口の中から行うため顔に傷はつきません。顎骨に行う手術は口腔咽頭部が腫れるため、安全および安心のため入院下の全身麻酔手術が良いと考えます。
図に示しましたが、一般的には5つの手術法のうち、下顎枝矢状分割術、Le Fort 1骨切り術、オトガイ形成術がよく行われます。
1、下顎枝矢状分割術
2、Le Fort 1 骨切り術
3、オトガイ形成術
4、上顎骨分節骨切り術
5、下顎骨分節骨切り術
手術は顎変形症と診断されれば、一般的には矯正歯科治療が先に行われます。しかしサージェリーファースと診断されれば手術が先に行われます。この場合には、矯正歯科治療は手術後に行なわれます。
顎矯正手術の詳細について説明しますと、
1、下顎枝矢状分割術
下顎枝は下顎骨のえらの部分から後方の骨を言います。この部分の骨を両側とも2枚おろしのように割ります。そして歯が付いている部分の骨を動かします。
適応:種々の方向に動かせますので、下顎前突・下顎後退・顔面非対称・開咬等適応範囲は広いです。
*下記の図を参
ステップ1:切開、剥離から下顎枝内面の骨切り
手術操作が容易に行えるように十分な開口状態が必要です。通常は指が3本入る位(40-45mm)の開口状態にします。口に中の後方の頬粘膜を切開し下顎枝の骨面を露出します。そして下顎枝内面を剥離し下顎小舌(下顎枝内面の突起物)を明示します。この突起物の直上で骨切りを行うのが安全です。ここの皮質骨と呼ばれる硬い部分の表層の骨を切ります。
ステップ2:下顎枝外面の骨切り
下顎枝の外側の骨膜を剥離し下顎角(えらの部分)を明示します。この下顎角と呼ばれる部分で下顎骨の外側の硬い部分の骨(皮質骨)を切ります。下顎骨の下端までしっかりと切らないと後の分割がうまくいきません。表層の硬い骨(皮質骨)の骨切りをあまり深くまで入りますと太い神経があるので注意が必要です。
ステップ3:下顎枝内面骨切り部と下顎枝外側骨切り部の連結
下顎枝矢状分割術は下顎骨の下顎枝部を2枚おろしにする手術です。下顎枝部の前縁で内外側の骨切り部を連結する縦の骨切りをします。骨切りは皮質骨のみで深く入らないように注意が必要です。この部分の骨切りは視野が明瞭で容易に行えます。
ステップ4:下顎枝の分割
下顎枝の内面、外面、前縁を骨切りしています。下顎枝の骨が2枚に分かれるにはまだ下顎枝の後縁部が残っています。この部分に骨切りはできませんので割ることになります。分割術というのはここから名前が付けられています。骨切りした部分にノミを入れ、少しずつ広げて割ります。骨内には太い神経があるので注意が必要です。分割する方法は種々ありますが、私は特殊なノミを用い容易に分割しています。
ステップ5:分割した骨片の固定
分割後に歯列がある骨片を上顎の歯列に咬ませます。予定の位置で咬んだら上下の歯を動かないように固定します。そして分割した骨片を左右とも固定します。通常はチタンプレートという金属板を使います。吸収性プレートが使われることもあります。
2、Le Fort 1 骨切り術
上顎骨の骨切りは殆どが Le Fort 1骨切りです。上顎骨を鼻腔の下でほぼ水平に骨切りし分離する手術です。切離可動化されますとその上顎骨はどの方向にも動かすことができます。骨切り方法は、私は階段状骨切りとしています。
適応:出っ歯、顔面非対称、上顎部陥凹、強度の下顎前突等の種々な形態異常に適応されます。
*下記の図を参
ステップ1:上顎骨の左右の骨面の骨切り
切開は下顎枝矢状分割術と同様に口に中から行います。上顎の6番目の歯から反対の6番目の歯までの歯茎の粘膜に切開を入れ骨面を出します。上方は骨の鼻腔下部が見えるまでです。上顎骨の左右骨面を後方まで骨切りします(歯の根尖部よりやや上を水平に骨切り)。私は階段状骨切りをしています。理由は移動の距離がわかりやすいこと、鼻翼部の膨らみをつくることです。このステップでは左右の上顎骨表面、左右の鼻腔側壁が骨切りされます。
ステップ2:上顎骨後方、鼻中隔の骨切り
上顎骨を分離するには、まだ鼻中隔の骨と後方の上顎骨結合部分を切る必要があります。鼻中隔は鼻中隔マイセル、上顎骨後方は湾曲マイセルというノミを使って切離します。上顎骨後方部分には大きな血管が周囲にありますので、確実な位置へのノミの挿入が重要です。
ステップ3:上顎骨の分離
これで歯の付いた上顎骨はほぼ骨切りされました。上顎前歯部に左右の親指を当て下方に下げ分離します。初めに骨切り間にノミを入れる場合もあります。分離された上顎骨は前後、左右、回転と種々の方向に動かすことができます。分離された上顎骨後方に太い血管がありますので、損傷しないように注意が必要です。
ステップ4:骨片の固定
ステップ5:鼻翼部の処置
3、オトガイ形成術
下顎骨の正中下端部分をオトガイと呼びます。この部分は良好な側貌を得るのに大変重要な骨です。オトガイ部を動かすことにより側貌はかなり変化します。適応は広くオトガイを出したり、引っ込めたり、短くしたり、長くしたりと種々に動かすことができます。
手術は口の中から行います。下顎の3番目の歯から反対の3番目の歯まで粘膜を切開し、骨面を露出します。左右の骨面を広く出しすぎると左右に太い神経があるので注意が必要です。
骨切り方法には種々ありますが、一般的には正面からみて逆Vの形で骨切りします。骨切りは全周に行われますので容易に分離します。さらに中抜きが必要な場合や、幅を狭める必要がある場合は骨切りを追加します。
分離した骨片は手術前にシミュレーションした位置まで動かし、チタンプレート等で固定します。最後に骨切り周辺の段差を修正します。
4、上顎骨分節骨切り術
手術は口に中から行います。この手術はオトガイ形成術と同じく顔面の前方部分の手術で、視野が明瞭に得られ比較的容易な手術です。
通常は左右4番目の歯を抜去し、上顎前歯6本を含んだ上顎骨を骨切りし後方に移動します。歯を抜いた部分の隙間分を後方に移動出来ますので、上顎前歯はかなり引っ込んだ感じになります。このため出っ歯の治療によく使われます。また矯正歯科治療中で上顎前歯を早く後方に動かしたい場合にも適応されます。移動した骨片はチタンプレート等で固定します。
5、下顎骨分節骨切り術
あまり使われない手術ですが、受け口でオトガイが前に出ていない場合や、出っ歯で上下で分節骨切り術が適応と判断された場合に行われます。上顎の場合と同じく矯正歯科治療中で、下顎前歯を早く後方に動かしたい時にも適応できます。
口の中からの骨切りは単純で、左右4番の歯を抜去し、下顎前歯6本を含んだ骨を出来た隙間分だけ後方に下げます。移動した骨片はチタンプレート等で固定します。